皆さん、ご機嫌よう。
……と言いながら、今年の暑さには私たちも思わず口にしたくなります。
「暑いですねぇ……」
妊婦さんにとって、この暑さは本当に大変です。
ただでさえ身体が変化している妊娠中。体温調節もしづらく、いつもより疲れやすかったり、息苦しく感じたりする方も多いのではないでしょうか。
暑いからクーラーの中で過ごす。
これはもちろん大切です。
「妊婦は冷房禁止!」なんて、そんな昔の根性論みたいなことを言うつもりはありません(笑)
今は上手に文明の力を借りる時代です。
ただし、ひとつだけお願いがあります。
身体の中心や足元を冷やしすぎないでください。
妊娠中の冷えは、血流の悪さや身体のこわばりにつながり、腰痛やむくみなどの不調を感じやすくなることがあります。
例えば、
・靴下を履く
・足首を冷やさない
・レッグウォーマーを使う
このくらいの小さな工夫で十分です。
おすすめはシルク素材の靴下やレッグウォーマー。
「靴下なんて暑い!」と思うかもしれませんが、素材を選べば蒸れにくく、慣れると裸足の方が落ち着かなくなる方もいます。
身体って正直なんですよ。
妊婦帯や腹帯は必要?選び方を間違えるともったいない
最近はガードル型の妊婦帯も人気ですね。
見た目も安心感がありますし、「妊婦らしい準備をした」という気持ちにもなります。
それも妊娠生活の楽しみのひとつ。
でも、助産師として少しだけ言わせてください。
身体の仕組みから考えると、ただ締めれば良いというものではありません。
お腹を強く圧迫してしまうタイプは、苦しさを感じたり、蒸れたりすることもあります。
妊婦さんが感じる腰痛や背中のつらさの原因は、単純に「お腹が重いから」だけではありません。
妊娠中はホルモンの影響で骨盤周りの靭帯がゆるみ、姿勢も変化します。
たった10ヶ月ほどの間に、身体は赤ちゃんを育てるために大改造されているのです。
例えるなら……
家の間取りを変えながら、同時に家族を増やしているようなもの。
身体に負担がかからないわけがありません。
だからこそ、骨盤ベルトなどを正しく使うことには意味があります。
戌の日とは?なぜ妊娠5ヶ月で腹帯を巻くの?
日本には昔から「戌の日」という風習があります。
妊娠5ヶ月頃の戌の日に、安産を願って腹帯を巻く習慣です。
なぜ犬なのか?
犬は多産で、お産が軽いと言われてきたからです。
そこから「犬のように安産でありますように」という願いを込めて、安産祈願をする文化が生まれました。
昔の人は、今のように医学的な知識が十分ではない時代でも、身体を守る知恵を持っていました。
腹帯には、
・大きくなるお腹を支える
・冷えから守る
・外からの衝撃から守る
・緩んでくる骨盤をサポートする
そんな実用的な意味もあったのです。
現在でも、戌の日に合わせて腹帯を準備される妊婦さんはいらっしゃいます。
中には「母から教えてもらいました」と晒しの腹帯を持って来られる方もいます。
そんな時、私たちは少し胸が温かくなります。
「文化がちゃんと受け継がれているなぁ」と感じる瞬間です。
腹帯や骨盤ベルトは“買うだけ”では意味がありません
ただし、大切なのはここ。
腹帯も骨盤ベルトも、購入しただけでは身体を助けてくれません。
正しい位置、正しい巻き方で使うことが大切です。
せっかく買ったのに、
「なんとなく苦しいから使わなくなった」
「巻き方が分からない」
では、もったいないですよね。
当院では骨盤ベルトを購入された方には、使い方をお伝えしています。
忘れてしまった時に確認できるよう、巻き方を写真で残しておくこともあります。
晒しの腹帯を希望される方には、巻き方もお伝えしています。
昔ながらの方法も、現代の身体に合わせて上手に取り入れていきましょう。
妊婦であることを隠さなくていい
最近は「妊婦と分からない服装をする」という話も聞きます。
でも私たちは思います。
「妊婦で何が悪いの?」
堂々としていいんです。
妊娠は特別な時間です。
お腹の中で新しい命を育てている。
それって、ものすごいことですよ。
電車で席を譲ってほしい時も、遠慮しすぎなくていい。
「すみません、妊娠中なので席を譲っていただけますか?」
と言っていいんです。
妊婦さんは甘えているのではありません。
身体の中で、大仕事をしている最中なのです。
安産のためにできることは、自分の身体を知ること
ただし、ここも大切。
妊婦さんだから何をしてもいい、という話ではありません。
赤ちゃんを守ることは、自分の身体を大切にすることから始まります。
食事、運動、睡眠。
妊娠中の生活は、必ず未来の自分に返ってきます。
「これくらい大丈夫」
と思う気持ちも分かります。
でも、その選択をするのはあなた自身です。
今食べているもの。
今過ごしている時間。
それが未来の身体を作っています。
完璧を目指す必要はありません。
でも、自分の身体に少し興味を持ってあげてください。
安産の秘訣は「自分の身体と仲良くなること」
私たちは長く助産師をしてきて、本当にたくさんの妊婦さんを見てきました。
もちろん年齢分、人生経験もあります。
でも、助産師が何かを言っても、妊婦さん自身が「自分の身体を大切にしよう」と思わなければ、ただのおしゃべりになってしまいます。
安産への第一歩は、
自分の身体を知ること。
そして、
赤ちゃんを迎える準備を楽しむこと。
妊娠期間は不安もあります。
でも、本来は人生の中でも特別で、愛おしい時間です。
身体を整えて、心を整えて。
「妊娠して良かった」
と思える毎日を過ごしてほしい。
そのお手伝いをするのが、私たち助産師の仕事です。
一緒に、素敵な妊婦生活を楽しみましょうね。