うれしいような、驚いたような、なんだか手放しには喜べない自分がいる・・・
 もしかするとだんだんとそういった気持が交互にあらわれてくるかもしれません。
 そんな私って大丈夫?
 母になれるのかしら・・・?
 そう感じるのは自然なことで、はじめは皆さん初心者なのです。
 人間はこの先の予想がつかないことはとても不安に感じるものです。でも同時にあなたの気持ちの別のところでは、これから起こる今まで経験したことのない未知の世界に興味がわいていませんか?

 だってあなたのどちらかの手、気がつくと赤ちゃんがいる下腹をスリスリさすっていませんか?・・・ほうらね、もうすでにあなたはりっぱなお母さんですよ。
 自信を持ってお産を迎え、育児の自信に繋げられる様に、助産師外来の受診や勉強会に参加されることで少しでも不安を解消していただきたいと思っています。また、何度も通っていただくうちにクリニックに入った瞬間の緊張を緩和できるのではないかと期待しています。その為に柔らかい家庭的雰囲気にこだわった造りにしました。
 お産に必要なこと、それは心を開き、お産する自分自身を受け入れることです。


 それには、自分の体を信じること、お産を怖がらない体を作ること、母乳に恥じない食事を摂ること、規則正しい生活を送ること、そして何より医療者との信頼関係が必要です。


体を作ること

 車社会の産物は大変便利で有難いものですが、同時に妊婦に『運動不足』という形の副産物をもたらしました。
 お産にとって『歩く』という行為は人間の体を整えたり筋力を鍛えたり重要な役割を担っています。ちなみにお産を運動に例えるとマラソン一本42.195kmをこなす位の体力が必要といわれています。かなりの体力が必要といえます。これはものの例えで、決して『今すぐマラソンを始めてください』ということではありません。そのくらいの体力と気力が必要ですよということです。


 マラソン大会の前を思い出してみてください。練習もなしにいきなり長い距離は走れませんから、数か月間練習して本番に臨むのが通常です。あるいは趣味として毎日ランニングをされている方でも、本番を目前にするといつものメニューとは中身を変えて本番用に筋肉を調整するような練習されると思います。そしてこのような積み重ねが自信となり本番がどこか楽しみになってきます。
 お産も同じように本番に向けての努力が、闇雲に不安を抱えていた妊婦さんから自分らしいお産に向けて自信を持った妊婦さんへと変えてくれます。また妊娠中から程よく体力づくりをされた方は産後の肥立ちも比較的順調な方が多いようです。そういった意味でもお産前の体力作りは非常に重要と考えています。


母乳に恥じない食事と生活

 質素な和食を摂りましょう。

 基本的には今までのような贅沢な食事は、妊娠中から産後の授乳期には必要ありません。地に足のついたお産をするために必要なのは、和食中心の粗食を三食しっかりいただくことです。理想は“季節の地の物(その時期その土地で採れた食材)”です。
 あくまで『日本人の体は和食で整える』と考えています。洋食中心で召し上がっている方はこれから大改正が必要です。体に必要な分だけを摂取されている方は乳房トラブルも少ないと感じています。
 また皮膚の露出の多い方や冷たいものが好きな方、不摂生な生活を改めない方などに体の冷えを多く感じます。例えば母乳は血液の一部ですから、体が冷えると母乳も冷え、血行が悪くなると母乳の分泌も悪くなります。いつも体を冷やさないことが大切なのです。


 ほんの少し生活を見直すことで妊娠中から産後の生活がぐんと楽になります。このような日常生活のあり方を、妊婦健診の時だけでなく勉強会や作業を通してお伝えしていきますので妊娠中何度も通っていただきたいと思っています。
 当院に足繁く通っていただく理由は、スタッフが不安に対する適切なアドバイスや相談をお受けするのはもちろん、他の妊婦さんとお話したり先輩妊婦さんの経験談をお聞きして、不安を取り除く術を人とのかかわりの中で見つけていただくことにあります。
 あるいは自然の中で癒される方には、木々に囲まれたクリニックの裏庭で作業をされてもよいでしょう。自然の偉大なパワーが優しく包み込んでくれるかもしれません。時には“修行僧”のように『無』を感じるのもおすすめです。

 お産は体がリラックスすることにより進行していくわけですが、なれない場所で心が緊張していては体は緩みません。人は心が開いて初めて体が開いていくのです。

 建築物についても、何度もご来院されて時を過ごすうちに『もう一軒のおうち』のように感じていただき、お産の際も気構えることなく安心して過ごせるよう、通常の産婦人科クリニックの既成概念をできるだけ取り除いた造りになっています。施設や住居設計など経験豊富な藤木隆男建築研究所の藤木隆男先生に設計を依頼し、2年の歳月をかけてかたちにしてきました。


 しかし、何よりもお産に必要なことは『私が産む』ということをご自身が自覚されることです。そのために私たちスタッフは惜しみなくエールを送り続けます。